Project
プロジェクト概要
重水素学:重水素が示す特性の理解と活用
理論から実装まで、体系的な重水素研究で未来をデザインする
重水素化物質について「つくる」「わかる」「はかる」「つかう」の4分野を連動して研究を推進することで、基礎理論から重水素化物質の設計、機能の追究までを体系的に捉えた「重水素学」という新たな研究領域を開拓することをめざします。
本プロジェクトを通して、医薬品をはじめ幅広い材料に重水素化を導入する基礎を形づくり、重水素化で物質の機能をデザインする次の時代のスタンダード 「Deut-Switch」 を提案します。
(1)つくる(合成法開発)
重水素化物質、
特に重水素化生体関連物質の合成法を開拓する。
(2)わかる(理論構築)
重水素化物質を量子論的に理解するための
基礎理論を構築する。
(3)はかる(機能開拓)
重水素化物質、特に重水素化による
医薬分子と分子触媒の機能を開拓する。
(4)つかう(代謝研究への利用)
重水素化物質を利用し、薬物代謝酵素による
代謝活性予測・評価法を開発する。
重水素とは?
重水素(D, 2H, deuterium)は、軽水素(H, 1H, hydrogen)の放射性のない安定同位体です。自然界に存在する重水素のほとんどは137億年前にビックバンで誕生したものと言われており、地球上では主に重水(HOD)の形で存在しています。重水素は主に軽水素の等価体として、様々な分野で活用されてきました。例えば、有機物質の C–H 結合を C–D 結合に置換した物質(重水素化物質)は同位体標識体(トレーサー)として生命科学における代謝分析に用いられています。
その一方で、重水素化物質はもとの軽水素置換体と大きく異なる物性を示す事象が知られており、近年は重水素化物質の設計と活用が国際的に活発化しています。