A02、A03、A04班の研究成果をプレスリリースしました。
2022年7月21日(木)に、A02班分担研究者の宇田川太郎 助教、A03班代表研究者の中寛史 准教授、A04班代表研究者の前川京子 教授らの共同研究の成果をプレスリリースしました。詳しくは下記リンクをご覧ください。
中寛史 薬学研究科准教授、糸賀萌子 同修士課程学生、山西雅子 同修士課程学生(研究当時)、竹本佳司 同教授、宇田川太郎 岐阜大学助教、前川京子 同志社女子大学教授、小林文音 同学部生らの研究グループは、医薬品などの複雑なアルコールに含まれる水素を重水素へと効率的に置き換える方法の開発に成功しました。
医薬品の有効成分に含まれる特定の水素原子を重水素で置き換えた重医薬品は、体内での代謝に対する安定性が高いため、少ない用量で長く効き、副作用も少ない優れた薬として臨床応用への期待が高まっています。医薬分子に含まれるヒドロキシ基 α 位の炭素−水素結合は代謝による切断を受けやすい位置であるため、重水素化の魅力的な標的部位ですが、ヒドロキシ基 α 位のみを重水素化した医薬分子の合成は困難でした。
この問題に対して本研究では、機能性含窒素配位子をもつイリジウム錯体触媒によって、医薬品を含む幅広い種類の複雑なアルコールに含まれる水素を、重水を用いて重水素へと効率的に置換できることを明らかにしました。従来とは異なり、医薬品に含まれる配位性官能基の影響を受けることなく、ヒドロキシ基 α 位を優先して重水素化できます。この方法によって数種の医薬品や天然物の効率的重水素化も可能となりました。
今回、医薬品を含めた複雑なアルコールの直接重水素化技術を確立したことで、様々なアルコールに直接重水素を導入することが可能になりました。これにより、医薬品を含めた機能性有機分子が示す本来の性質を損なうことなく、耐久性のみを上昇させる分子創出の可能性が大きく広がりました。
本研究成果は、2022年7月20日に、国際学術誌「Chemical Science」にオンライン掲載されました。